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私は犬
第22章 新しい人
幕が下がって隣を見ると、おば様は目許をハンカチで押さえていて。剛ちゃんは鼻をズビズビ言わせながら兎のティッシュで鼻をかんでいた。

何処から出したの、そのティッシュ?よく見ていると、内ポケットから次々といっぱい出てくる…。凄いっ!手品師みたいっ!頭の中で、ポール・モーリアのオリーブの首飾りの演奏が始まっちゃった…。誰か助けてっ、この脳内演奏、止めてっっ!

結局、脳内演奏は自宅に戻って有史さんの顔を見るまで、私を苦しめ続けた。チャラララララ〜チャラララララ、ランララ〜♪って。

「おかえり。楽しかった?」

そう言われて大変な事を思い出した。トイレっ。トイレ行かなきゃっ!

慌ててトイレに駆け込み、ゆっくりパンツを下げると。案の定クロッチにべっとりと、いやらしい汁がへばりついていて。

どうりでお股がムズムズする訳だ。と1人納得した。恍惚とするような、素晴らしい歌声を聞いただけなのにこんなになっちゃうなんて…。私、やっぱりおかしいのかしら?

恥ずかしいから、有史さんには絶対に知られたくない。速やかに証拠隠滅しなくっちゃ…。固くそう決意して、パンツを小さく丸めて手に握りしめながら、トイレから出た。

直ぐに洗わなくちゃ!
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