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私は犬
第25章 罪には罰を*
お母さまの真っ赤な爪が私の髪の毛を引っ張って、冷たい浴槽の中の水に頭を無理矢理押し込んだ……。苦しい……助けて…息が出来ないっ。

『全部あんたが悪いのよ!これがあんたの為なのっっっ!』

そう叫びながら、何度も何度も何度も、私の髪の毛を掴んで、冷たい水の中に頭を強引に押し込み続ける…。

鼻から水がはいってきてとても痛い。もがいても、もがいても、ちっとも逃げられなくて、私を押さえ付ける力がどんどん強くなる。

苦しいよ……息が出来なくて苦しいよ……助けて。止めてお母さま……。私、いい子にするから……。次は必ず言い付けを守るから……。だから…………お願い……。

「真子、真子っ、起きろ。おい、大丈夫かっ?」

「はぁはぁはぁ…。」

夢…?夢で…よかった……。心臓が、まだバクバク鳴っている。

「はぁはぁ……。大丈夫…。怖い夢を見ただけなの。だから大丈夫。」

目の前で、スーツ姿のまま心配そうに顔を覗き込んでくる有史さんにそう告げると、ぎゅうーっと抱き締めてきた。

スーツから煙草とお酒と……。香水のにおいがする。別の誰かと会っていたのかもしれない…。赤い爪の…。

セフレって、身体だけの関係って、きっとこういう事なんだ…。他に誰かの存在を感じても、口にしちゃいけない。プライベートに干渉してはいけない。そういう契約を交わしたのだから。

私…。なんて契約をしちゃったんだろう。今さら後悔しても遅いけど……。
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