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私は犬
第29章 諦めろ*
木曜日

会議って…。何でみんな起きていられるの?議事録?なにそれ…。会議に珈琲が欠かせない理由が分かったわ。飲むと気分が切り替わる。これは、ありがたい。

復職してみると、給湯室は水汲み場兼、冷蔵庫置き場兼、井戸端会議場、時々、セルフお菓子分配会場へとその役割を変えていた。

通路の隅の休憩スペースには、カップドリンクの販売機が設置されていて、オフィスの片隅にはお菓子やペット飲料を購入できる簡素な仕組みが導入されていた。はぁ〜。あのキャラメルが食べたい…。

時々、女王社員が男性社員に、何かをおねだりしている甘酸っぱい現場なんかも目にするから、ちょっとしたロマンス催事場になっているのかもしれない。

もっと早くこうすれば良かったのに…。生きた給茶機のごとく、お茶を淹れ続けた昔を思い出して、お腹の底から苦い物が込み上げた…。

おまけに、茶葉や珈琲豆の代金は、淹れる人が負担するなんて嘘を丸っと信じて、せっせと補充し続けてた。

社員食堂で、偶然、当時一緒に働いていた派遣の方に会って、買い置きしておいた茶葉や珈琲豆が頻繁に渡辺さんらにお持ち帰りされていた事実を聞かされた時は、びっくりし過ぎて目玉を床に落とす所だったわ。

あまりにも無くなるから、灰色の猫と仲良く喧嘩する茶色いネズミが、秘密の巣穴に持って行ってしまったのだとばかり思ってた。どーりで、巣穴の扉を必死に探しても、見付からない訳だ…。納得。
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