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私は犬
第30章 主導権*
そういえば契約内容にある、《私の作った国の住民になる》ってやつ。あれの意味がイマイチ理解できない。こうして、有史さんの部屋で過ごす事が、住民になる事なの?

「私、ちゃんと貴方の国に住めているのかしら?これで、国民としての義務は果たせているの?」

有史さんは、やっぱりタブレットから顔を上げて、きちんとこちらを見てから口を開いた。

「俺の目の届く所に居てくれれば、それでいいんだ…。」

なんだそりゃ?益々、分からなくなってきた。そういう曖昧な感じじゃなくて、もっと明確にして欲しい。例えば、食事は20分以内に済ませる事。とか、使ったコップは自分で洗え。とか。でないと、何をすればいいか分からない。

「不満か?」

「不満じゃない。少し心配だっただけ。」

うん。不満じゃない。不満な訳じゃない。落ち着かないだけ…。

今日もセックスするのかな?だとしたら、残りが30日分になる。後、30日しかセックス出来ない…。なら、思い切りしておきたい。

キッチンに行って、ウォーターサーバーからお水を汲んだ。鎮痛剤を口に放り込んで、水で飲み下す。

これでいい。少しの痛さなら大丈夫。

ダイニングに戻って、相変わらずタブレットとにらめっこを続けている有史さんに声を掛けた。

「ねぇ。私、今日は1日中セックスしていたいの。」
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