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ロイヤル&スレイヴ!
第4章 3.ウワサのあのコとあの4人

「この二匹はね、学校に住み着いてる親子猫。
こっちのちっちゃい黒猫が最近生まれた子猫で、木の上で降りられなくなってるところ見かけたんだ。
多分、木の枝か何かで前足引っ掻いたらしくてそれで怖くなったんだと思う。木の下で親猫が不安そうにしてたから、僕が助けてやろうと思って」
そしたら、僕も一緒に落っこちちゃった、と笑ってみせてくれた男の子――左近衛 楓(さこのえ かえで)くんは、手当のすんだ子猫を膝の上に乗せて、ほっとしたようになでていた。
子猫の前脚と楓くんの左腕にはお揃いのように包帯が巻かれている。
「未結、ありがとう!僕もノワールも助かったよ」
ノワールというのはこの子猫のことらしく、今は大人しく眠っていた。
すうすう、と小さな寝息をたてていてよほど楓くんの膝の上が心地いんだろう。
「私で役に立てたなら嬉しい。ノワールも楓くんも擦り傷でよかった」
手当をしている最中、楓くんは自己紹介してくれた。
自分の名前と親子猫たちの名前を。
親猫はクロスケ、子猫はノワール。
名前の通り、二匹とも黒猫だった。
なんで女の子なのに親猫はクロスケなの、と私が聞くと、
「見た目で適当に名前つけてたんだ」
てへへ、と楓くんは茶目っ気たっぷりに舌を出した。
確かに、動物に詳しい人でもない限り、パッと見ただけでオスかメスかなんて判断つかないよね。
納得の意を込めて、私は頷く。
「そしたらある日、子猫連れてくるんだもん。びっくりしてさ、猛ちゃん――あ。仲良い友達なんだけどさ、猛ちゃんにクロスケみせたら、こいつメスだぞって教えてくれた」
「猛ちゃん……?」
耳に馴染んだ聞き覚えのある名前に、思わず私は呟いた。
猛、ってもしかして。

