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ロイヤル&スレイヴ!
第4章 3.ウワサのあのコとあの4人

「番谷 猛。僕の一個上で未結とおんなじ2年生だよ。幼馴染なんだー」
へへ、っと屈託のない笑顔で答える楓くんは誇らしげにピースサインを胸の前で作ってみせた。
その様子から、ほんとうに猛くんのことを慕っているんだってわかる。
「そうだったんだ。私もね、猛くんにはいっぱいお世話になってるの」
「あれ、未結も猛ちゃんの知り合い?」
翡翠を彷彿とさせる大きな瞳に疑問の色を浮かばせた楓くんは、きょとんとした表情で私を見る。
う、かわいい。
思わず、胸はきゅんと高鳴った。ハグしたい、そんな気持ち。
こういうのを母性本能をくすぐられる、っていうのかな。
「未結?どしたの?」
不自然に言葉を途切れさせた私を不思議に思ったのか、楓くんは首をこてんと傾げる。
可愛らしさにブーストがかかりまくりだ。
「あ、言ってなかったよね。私、転校生なの」
きゅんきゅんしてました、なんて言えないし、悟られてもそれはそれで恥ずかしいので、私はあわてて楓くんに答える。
「で、おなじクラスの猛くんには隣の席ってよしみでいろいろよくしてもらって」
「えー!そうなの、じゃあ僕の兄ちゃんのことも知ってたりする!?」
声のトーンがさらに一段階上がる楓くん。
テンションの高まりで前のめりになる楓くんからは、今にも、キラキラという効果音が聞こえてきそう。
ただ。
「僕の兄ちゃん」に相当する人物が思い浮かばない。
「楓くんのお兄ちゃん?えーと」
物覚えの悪い私の頭がどうにか記憶を探り始めるも、そもそもクラスメートの名前はおろか顔すらまだ全員覚えられていなくて。
左近衛、なんて苗字の人いたっかな、となるべくゆっくり思考を巡らせてみたけれど
特定の人物を思い浮かべるのは今の私には不可能に近い、かもしれない。
ううーん……。
「リュウ兄!楯無柳也先生ー」
眉間にシワを寄せては、すっかり抜け出せないループに陥っていた私に、とびきりの笑顔で助け舟をだしてくれる楓くん。
彼の口から飛び出たのはというと、
なんと私と猛くんの担任の先生の名前。
「え?」
意図せず自分の声がひっくり返る。
楯無先生。
が、楓くんのお兄さん?
「うんうん。リュウ兄かっこいいっしょ」
はい、それはもう素敵な先生だと思います。
思いますが…
せ、世間って本当に狭いんだな、と実感。

