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tsu-mu-gi-uta【紡ぎ詩】
第35章 惚れた女に母の面影を見る男~鬼平犯科帳 猫じゃらしの女~
同じく密偵の一人大滝のごろぞうが

 伊左さんも遊廓にいちゃ危ねえよと、忠告したにも拘わらず、

 伊左次は自分はおよねの側に残ると言いました。

 何も知らない女を事件に巻き込んでしまうからです。

 鍵型が偽物だと知って報復にくるに違いない連中から、およねを守るためでした。

 伊左次が五郎蔵に呟いた科白が印象的です。

 俺は実は関宿に捨てられていた捨て子だったんでさ。

 そんな俺を拾って育ててくれたのが関宿の遊廓で働く遊女たちだった。

 物心つくまで、俺はおよねみたいな女たちをお袋代わりにして育ったんだよ。

 だから、こういう女たちを酷い目に遭わせるわけにはいかないんです

 伊左次はおよねに自分を育ててくれた遊女たちの面影を見、

 恩義も感じていたのでしょう。

 結局、伊左次の働きのお陰で、盗賊一味は捕らえられ、

 やはり報復のためにおよねを攫いにきた盗賊団たちから、およねは

 助けられました。

 怖かったよと泣いて縋り付くおよねを抱きしめ、

 怖い思いをさせて済まなかったなと囁く伊勢次。

 
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