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tsu-mu-gi-uta【紡ぎ詩】
第29章 人の心は筋書き通りには動かない~ 鬼平犯科帳 炎の色より~
そんなおまさがある日、荒神のお夏という盗賊の元女房に眼をつけられました。

 その昔、荒神一味という盗人集団がいた。犯さず殺さず傷つけずと、盗人仁義の

 三箇条を守り抜いた、盗賊の鏡? のような頭が率いていて、お夏はその妻でした。

 頭が亡くなり、その七回忌を終えた後、新たな頭目を頂いて荒神一味が旗揚げする

 に際し、二代目としてお夏が祭り上げられた。

 上方にいたお夏はそのために江戸に出てきた。

 そのお夏が眼をつけたのが、おまさでした。

 お夏は何故かおまさが亡くした妹に似ていると気に入り、義姉妹の契りまで

 結ぶ。

 自分は平蔵に使われている身だからと、おまさは平蔵とお夏、そのどちらをも

 裏切ることに内心はとても罪の意識を感じていた。

 やがて、先代の七回忌が終わった。

 しかし、お夏は先代の名を汚すことなく、三箇条の掟を守り抜いたおつとめ(盗み)を

 しようとしているのに、手下たちは端から聞く気もない。

 今時、そんな悠長なことはやってられないと、お夏の意向を無視して急ぎ働き、

 つまり、人を殺傷することにためらいを憶えていない。

 先代の名を貶めることを恐れたお夏は七回忌の夜、

 集まった手下たちがいる隠れ家に自ら火を放った。

 おまさが平蔵に報告しておいたため、現場には火付け盗賊改め方も

 出張っていた。

 
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