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戦国ラブドール
第20章 半兵衛は二度死ぬ
「――私は、自分とあなたを重ねて見ていました。あなたが理不尽な苦痛を耐えられれば、私も同じように耐えられる気がしたのです」
「あたしを……?」
半兵衛は胸から離れると、大海の足を広げ、内腿に頬ずりする。
「私は一度、武士として死にました。斎藤に仕えていた話は、知っていますね? 当主龍興様の乱れた心を諫めるため、城を奪い……そこで、人生を終えました。そしてその後、近江へ来た事があるんです」
「近江へ? それは、知りませんでした……」
「浅井家臣の客分として、一年ほど滞在しました。生まれ変わり、この地で新しい人生を探そうと思ったのです」
大海は、自分の短い髪を思い出す。その頃の半兵衛の気持ちが、大海にはよく分かったのだ。
「ですが、私は近江から逃げました。結局旧領へ戻り、目的もなく惰性で毎日を過ごしました。一人で立ち上がり、生きる覚悟がなかったのです」
「でも、半兵衛殿は今、秀吉様の元にいらっしゃいます」
「ええ。私を生まれ変わらせたのは、私自身ではありません。死んだ私へ何度も声を掛け、情熱を注いだ秀吉でした」