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戦国ラブドール
第20章 半兵衛は二度死ぬ
「それは、構いませんが……それで、あなたの勉強になりますか?」
「そうしなければ、意味がないんです。お願いします」
何か、指導以上の意図がある。そう察した半兵衛は、深呼吸し頭を切り替える。手に取るのは、黒の碁石。まだ外は、夜明けの気配なく沈んでいる。灯台の明かりを頼りに、対戦は始まった。
二、三手打ち、半兵衛は違和感に気付く。大海が、いつもより熟考なのだ。本気の対戦だから、よく考えを練っている。初めはそう思っていたが、それも少し違っていた。
ぱちりと音がして、大海の石が碁盤に置かれる。それは、半兵衛が予測していた大海の手とは違う位置だった。
(……どういう事だ?)
今まで指導をしてきた中で、大海の思考は頭の中に入れている。だが、今日の大海は、明らかにその情報と反した手を打ってくる。だが、迷いに迷った果てには、いつもの大海と同じ思考を取る時もある。勝負よりも、半兵衛はそちらが気になって仕方がなかった。
とにかく大海の思考を読み切ろうと、半兵衛はしばらく無心で打ち続ける。碁盤に思考の波が見え始めてきた頃になって、半兵衛は違和感の正体に気が付いた。