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戦国ラブドール
第20章 半兵衛は二度死ぬ
「大海、少し話しても?」
半兵衛は手を止めると、改めて碁盤を眺める。そして自分の考えが間違いでないと確信すると、口を開いた。
「あなたは……吉継の打ち方を、再現していますね?」
大海ではない思考――それは、かつて夜が明けるまで共に楽しんだ吉継と、同じものだった。所々綻びが見えるのは、まだ吉継の癖を完全に理解し切っていないせいだろう。それを除けば、この碁盤で対戦しているのは、大海ではなく吉継であった。
「吉継は、碁の打ち方に人の生き方が出ると言っていました。あたしも、そう思います。半兵衛殿、吉継の生き方は、昔と変わっているでしょうか?」
碁盤は、白と黒の世界である。その色のない世界には、石を生かそうとする生き様が映っている。
「半兵衛殿がどうして吉継と会わないのか、その気持ちは分かります。だから、お願いだから会ってくれなんて無神経な言葉は言えません。でも、吉継の想いも、知って欲しかったんです」
「……吉継は、変わらないですね。大局を読み情を捨てる事も出来ますが、本質はとても優しい――あの子は、本当に出来た子だ」