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戦国ラブドール
第20章 半兵衛は二度死ぬ
 
 半兵衛の頭に過ぎるのは、一年前吉継が病に倒れ死にかけた時の事。吉継に自分の病がたびたび移っていると分かっていても、半兵衛は吉継をそばに置き続けた。その結果が、それである。

 半兵衛は病により、男としての機能を完全に失った。だが妻子のある半兵衛は、今さら種がなくなっても竿がくたびれても、未来が潰えた訳ではない。

 しかし、吉継は違う。まだ若く、様々な恋も未来も待ち受ける、真っ白な体である。吉継が息を吹き返し治ったと聞いても、半兵衛はとても安堵出来なかった。心臓が動いていても、人が生きているとは限らない。それは、半兵衛自身がよく知っているのだから。

 碁盤上で見れば、大海は負けている。例え大海が吉継を完璧に真似ても、半兵衛はそれを読み切れる自信がある。しかし白い波は、黒を洗い流し、長い間抱えていた闇を祓っていた。

「私の身勝手が、こんなに許されていいはずがない。なのに、あなた達は……」

 半兵衛が身を乗り出せば、碁盤にぶつかり石が床へまぜこぜに落ちる。それでも半兵衛は、構わず大海を抱き締める。半兵衛が想うのは、きっと二人分への感謝。大海は吉継の分まで、その想いを受け止めた。
 
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