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第24章 赤壁の戦い②

　
　未来ある武士と、所詮は慰み者である女の身柄。どちらが秀吉にとって有益かなど、考える間もない。大海が唇を噛み締めれば、半兵衛は指を這わせそれを解いた。

「吉継は、いくら孫六のためでも取引に応じるべきではない、と主張しました。しかし、それは愚策です。取引、それは今まで尻尾すら掴めていなかった紅天狗を、丸ごと捕まえる好機です。あなたへの恋慕で、目を曇らせている場合ではありません」

　半兵衛がこれから要求するであろう事は、大海に大きな負担を掛ける。吉継が先程半兵衛と諍いを起こしたのも、そのせいなのだろう。だが、大海には半兵衛の主張が正しく思えた。

「孫六が助かるなら……喜んで身を差し出します」

「差し出す必要はありません。取引に応じた振りをして、奴らを泳がせ巣を叩くのです。一度は流れた囮という話を、今度は実行するだけです」

　大海の気を楽にしようと思っているのか、半兵衛は楽観的に言い切る。しかし、万が一という話もあるのだ。危険を伴う事に変わりはない。

（吉継は……囮になんてさせないから安心しろって言いたかったのかな）