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真夜中のタシナミ
第1章 プライド高い秋野の場合
「あの、私をこれで買ってくれませんか?」
残業帰りの俺に声をかけてきたのは、一見真面目そうな綺麗な黒髪の女の子だ。
詐欺まがいの危ないことだろうとは思ったが、そういう声をかけてくるのが、俺が思ったような、いわゆるギャルではなかったことに驚き足を止めてしまう。
その子は、細い指を二本立てて俺を見上げる。
「やめてくれ、あいにくそういうのには興味ないんだ。」
「あ、あの、全然怪しいものじゃないんです。ただ、一晩ただけこれで私をかってください。」
そうしてまた彼女の細い指を二本立てた。
それが怪しいのに。
俺が怪訝そうな顔で見下ろしていると、こう付け加えた。
「別に、ホテルに言ったら強面の人たちがいて、お金奪ったりなんてこともないですし、シャワー浴びている間にお金奪って逃げるなんてこともしません。」
この言葉がさらに怪しくしていることに気づかないのだろうか。
なんとも間抜けなやつだ。
「そもそもこれってなんだ。」
俺は彼女を真似て指を二本立てる。
「…万円です。」
「え?」
「2万円です。」
「一晩二万で何でもヤっていいのか」
「ゴムは付けてもらってます。ごめんなさい。」
なぜ謝るんだ。
こうやって低くでる奴が大嫌いだ。
「あの、買ってくれますか?買ってもらえないようなら、失礼します。」
俺が冷やかして、それだけで帰る奴だと思われたのか?
または2万持ってないとでも思われたのか?
その上目遣いも腹立たしい。
「いいよ、今夜は俺が買ってやる。」