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真夜中のタシナミ
第1章 プライド高い秋野の場合




「ありがとうございます。少々お待ちください。」

ぺこりとお辞儀をして、裏路地に引っ込む。

何をしてるのかと思ったら、大きな荷物を抱えて出てきた。


よく見れば、彼女は身体が華奢で、弱々しく、表情もあまり変わらない。

声をかけてきたときから今まで、ずっとびくびくしている。



「こちらにどうぞ。」

「それ持とうか?」

「いえ、結構です。」




俺がせっかく気を使ったのに、可愛げがない。

「お名前うかがってもいいですか?」

「秋野だ。」

「下の名前もうかがいたいのですが」

「それよりお前の名前は?」


こういうのは自分から名乗るだろう。


「…好きな名前で呼んでもらって結構です。」

「自分の名前がないわけないだろう。」

「でも、ないようなものなので。」

「どういうことだ。」

「ごめんなさい、これ以上は。」



人の名前は聞いておいて自分の名前は言わないという卑怯さに犯罪の匂いを感じる。



そして連れて行かれたのはとあるホテルだ。

いわゆるラブホだ。






部屋に入る。



「設定はどうしますか?」

「設定?」

「はい、秋野さんが好きなシチュエーションとかありませんか?なんて呼んで欲しいとか、コスプレしてほしいとか、人妻を演じてほしいとか…。」


その時俺の頭に浮かんでいたのは、部下の今田沙織のことだった。




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