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禁断遊戯~背徳と罪悪の狭間(はざま)で~
第2章 燻る感情


“千夏ちゃん、少し人を疑う事しなさいよ”



――そうなんだ……人を信じすぎる所、直さないと。
 でもね、悠ちゃん……困ってるの、柊斗くんだよ。



 一緒に居る時は、ほとんど脳裏を過ぎらない悠の言葉。
 こういう居ない時には、必ずと言っていいほど浮かんでくる。

 と、そんな事を考え、頭を悩ませている時に、彼の携帯電話が着信を知らせた。

 その時の彼の表情を、私は見逃さなかった――屈託なく笑う彼の口元が、緩やかにつり上がったのを。



『柊斗か?』

「あぁ……父さん。飯? ん……ちぃちゃんと一緒に食べたよ」

『そうか……俺も飯食った所だ。そういえば、お前、今夜出かけるって言ってたけど、場所わかるのか?』

「あ、その事なんだけど……オレ、場所イマイチ判んないから、ちぃちゃんに道案内頼もうかなって思ってたんだけど……」

『そうだな、その方がいいか。あとで、俺から千夏ちゃんに電話しておく』

「わかったよ、うん。じゃあ、また」



――今、なんて……?
 道案内……しなきゃ、いけないの?
 うそ……でしょ……?


 かすかに聞こえてくる悠の声と、心臓の鼓動を速める彼の言葉。

 2人の会話に、焦燥感を覚えた私は、今すぐこの場所から逃げ出したいと思った瞬間だった。



「……ちぃちゃん、道案内よろしくね」


 そんな私を嘲笑うかのように、にっこりと――それでいて何かを含んだ笑みを見せる。


「……っ!」



――な、なんで……ドキドキ、してんの?
 ないない……絶対に、ない……!
 あ……わたし……。



 感情移入してしまうという弱点が私にはあった。
 それに気づいたのは、やはり、悠と出会った日に気づいた事。

 今、その弱点を突かれたような気がして――。



「あ、私……後片付け、しちゃうね!」


 それを誤魔化したくて、スッと立ち上がり、食器を持って、台所へ向かった。



――あんな事、されたら……無理。
 ただでさえ、大事にしなきゃ……って。
 悠ちゃんの子供だもん、邪気に出来ないよ。


「はぁ…………」



 無理矢理とはいえど、一時だけでも、彼の手の動きに感じてしまった私。

 彼に気づかれないように、小さくため息を吐く。

 同時に、自分の中で未だ燻っているものに、少しばかり嫌気が差していた――。

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