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禁断遊戯~背徳と罪悪の狭間(はざま)で~
第2章 燻る感情


「………………」

「ちぃちゃん、優しいし、情が深いからね。こういう話すると、ますます拒めなくなるでしょ?」



――優しくはないんだけど……ん?
 なんか、今……サラッと言われた?



 胸の痛みに、彼の話を聞いている事しか出来なかった私。
 けれども、すぐ後に耳を疑う小さな笑い声と、否定の出来ない言葉が聞こえて来た。



「な……そ、そんな事、ないっ! それに、私……優しく、ないから……」

「また、ムキになってる……判りやすいよね。でも、さっき言った事は本当だよ。今は……女として、ちぃちゃんの事、見てる。母親には見えないし……子供っぽいからさ」

「!」



――し、信じられない……
 あの時から、柊斗くんが、違う人に見えてしまう。
 悠ちゃんの子供だけど、今は全然違う……人。


 そう言って、悪戯っ子のように笑う彼の横顔に、私が知っている彼の面影はない――。

 私の見る目が変ってしまったのか、どうなのかはわからない。



「なに? オレの顔になんかついてる?」

「――……っ! な、なんでもない!」



 盗み見していたはずの彼の横顔を、いつのまにか凝視してしまっていた私。

 彼の言葉に焦り、ふいっと顔を横に背けた。



――わたし、今……見とれてた。
 でも……次は、拒めなくなる。
 それだけは……絶対に、ダメ。



 見とれていた事、そして――次に、同じような状況になった時、逃げる事が出来ないと悟る。



「……ちぃちゃん、帰りたい? オレ……」

「か、帰る! もう、遅いし……明日、起きれなくなるから」



 全てを見透かされているように、タイミングよく彼の言葉が車内に響く。
 後に続く言葉を遮るかのように、私は少し強い口調で“帰る”と伝えた。



「……帰さないと言ったら?」

「え……きゃ……っ!? な、んで……急ブレーキ……ひゃっ?!」



 帰さない――その言葉と同時に、ガクンと体が前のめりになって、私は驚きを隠せない。
 次の瞬間、今度は視界が反転して、彼の顔がはっきりと目に映る。



「……何もしないって、約束したけど……守れない」



 フッと、小さく笑う彼はそう言って、助手席のシートベルトを外した――――。


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