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禁断遊戯~背徳と罪悪の狭間(はざま)で~
第3章 偽り


 数分後――寝ぼけ眼で起きて来た彼は、テーブルの前でボーっとしたまま。
 箸を持っているにも関わらず、その箸は全く動かない。


「……柊ちゃん?」
「ん……眠い」


 ――箸持ったまま、寝てる……?
 ふふふ……子供みたいね。
 たまに見てるけど……飽きないなぁ。


 よくインターネット動画で“面白い映像”と称して、小さな子供がご飯食べながら眠ってしまったというのがあるけれど、今の彼もその動画に近い。


「ご飯食べてから、少し寝たら? 今日はお休みなんでしょ?」
「ん……」
「私は一度、家に戻って、夕方……悠ちゃんが帰ってくる頃、ご飯作りに来るから」
「……わかった」


 夕方には、きっと悠も帰ってくるはず――そう思った私は、彼にそう告げて、一度自分の家に戻る事にした。




 そんな彼を残して自分の家に戻った私。
 陽も高くなって、お昼を過ぎた頃、私の携帯電話が着信を知らせた。


「……もしもし」
『千夏ちゃん?』
「うん。き、昨日……ごめんね。風邪引いたみたいで……早く寝ちゃったんだ」


 ――嘘、吐いちゃった……。


『風邪? 腹出して寝たんじゃないの? 熱はないの?』


 クスクスと、小さく笑いながらも、心配してくれる――それが悠だ。
 けれども、風邪なんて引いてもいなし、熱もない。

 ただ――昨夜の事があるから、後ろめたい気持ちが私を支配して、咄嗟に嘘を吐いた。


「な……っ?! お腹、出して寝てないもん。ん……熱、ないよ」
『ははは……大丈夫みたいだな。俺、夕方に帰るから。飯、一緒に食べよう』
「うん……ご飯、作って待ってる」
「じゃあ、またね」

「はい」


 悠との電話は長くならない――それでも、そんな他愛もない話で、私の心は温かくなる。
 嫌な事も、何もかも、その時だけは忘れさせてくれた――過去の事も、昨日の夜の事も――。



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