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禁断遊戯~背徳と罪悪の狭間(はざま)で~
第4章 記憶

「で、俺からの忠告。柊斗の事、いつまでも子供だと思わない方がいい」
「え?」
「彼氏の子供って思ってる部分、千夏の中にはあるはずだ。それを捨てろと言ってるんだよ。相手は一人の男として見ろ」
いつになく、真剣な面持ちと強い口調で話す直人。
確かに、直人の言う通り、彼の事を異性として、考えた事はなかった――少なくとも、あの日までは。
けれども、今となっては、過去の記憶も蘇り、彼と二人きりになる事に恐怖を感じてしまった私は、彼の事を、一人の男としか見ることが出来なくなっていた。
悠と一緒に居ても、いつ何をされるのか――それに怯えさえ感じる始末。
「本当の事を言うとね、怖いんだ。悠ちゃんと居ても、落ち着かなくて……」
「怖い? お前、もしかして……?」
直人の問いかけに、私は小さく頷いて、空を見上げる。
「もう大丈夫……そう思ってた。悠ちゃん、優しいし……嫌な事、一つしない。すごく大事にしてくれる。一緒に居ると安心出来る。ずっと一緒に居たい……でも、思い出しちゃった」
ふふっと、小さく笑った私の脳裏を、ある光景が過ぎった――――。
明かりの灯らない人気のない路地裏。
背中に伝わるアスファルトの冷気。
聞こえてくる悲鳴と、荒い呼吸音。
尋常ではない激痛が脳天を駆け抜けた時、蠢いていたものが爆発して、私の意識は途絶えた――。
目が覚めた時、引き裂かれた服が辺りに散乱していて。
何が起きたのか――それは、下腹部に走る痛みと、内股に残る滑りが、全てを物語る。
暗闇の中で、声にならない声で泣き叫ぶ女性の姿――それは私自身。
「……やっぱりな。話を聞いて嫌な予感がした。あの時、俺が家まで送ってやれば……」
「直人は悪くないよ……気にしないで。でもさ、十年も経つのに、記憶って……凄いね」
「千夏……無理に笑うな。お前の苦しそうにしてる顔、見たくないから」
「大丈夫。過去は過去だもんね。思い出しちゃったけど……また、一から頑張るよ。ありがとう……」
苦しそうな表情を浮かべながらも、少しだけ震える私をあやすように、ポンポンと頭を撫でてくれる直人。
そんな直人の表情が見るのが、切なくて、顔を俯かせたまま、私は小さく頷いてみせた――――。

