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禁断遊戯~背徳と罪悪の狭間(はざま)で~
第4章 記憶

勤めている会社の退社時間は、夕方の六時。
もうすでに、外は暗くて、足元はほとんど見えない。
民家のある通りだから、街灯は整備されていて、恐怖に怯える事はなかった。
――直人に聞いてもらって、少し気持ちが軽くなった。
柊ちゃん……何を考えているのか、判らない。
悠ちゃんも、知ってて……どうして?
脳裏で駆け巡る過去の記憶と、悠と彼の不可解な行動。
いくら考えても、答えは見つからず――。
直人に話して良かったと思う反面、悠に話せないという辛さは消したくても消えるものではない。
本来であれば、いつも親身なって、傍にいてくれる悠に話すのが、妥当。
何となく、悠に隠し事をしているようで、彼との事も合い重なって、罪悪という言葉が脳裏を過ぎる。
「……はぁ。どうすればいいんだろう?」
自分の小さな溜息と大きな呟きは、ほんの少し前に軽くなった心を重くしていく。
同時に家路を辿る歩調も、徐々に速度を落としていた。
「奇遇だね。今、帰り?」
茫然としながら歩く私の背後から、覚えのある声がして、ハッと振り返る。
心臓の音を速めながら、その人物の顔を見て、驚いた。
「――……っ?!」
万に一つあるだろうか――?
この時間に、彼と出会うというのは、本当に珍しい事だった。
――なんで、ここにいるの……?
職場……逆方向、なのに。
偶然……必然……どっちなの?
そう聞きたいのに、不思議と声を出ず、自問自答する。
「そんな驚いた顔しなくても……ちぃちゃんの家、一度来て見たかったんだ」
「……な、んで? 仕事は……?」
「仕事は終わったよ。ここで待ってれば、ちぃちゃん通るだろうと思って」
待ち伏せ――というのは、大袈裟すぎるのかも知れない。
けれども、今の私には、そう捉える事しか出来なかった。
と、何の悪戯なのか、助けなのか、私の鞄に入っていた携帯電話が振動を始める。
「! ご、ごめん……電話、出るね」
「…………」
そう言って、その場から少し離れて、振動を続ける携帯電話を手に取り、相手を確かめてから、通話ボタンを押す。
電話をかけて来た主は、言うまでもなく悠だった。

