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禁断遊戯~背徳と罪悪の狭間(はざま)で~
第4章 記憶

『仕事終わった?』
「うん……今、帰り道。どうしたの?」
『今夜遅くなりそうだから、飯はいいよ』
「え……? あ、柊ちゃんのご飯は……」
『自分で食うから大丈夫だよ。仕事が終わったら、千夏ちゃんの所に行くよ』
「う、うん……そうだね。ほんと? 悠ちゃん、来てくれるの?」
『一度、家に帰ってから、車で迎えに行くから』
「わかった」
『じゃあ、また後でね』



 時間にして、ほんの数分の会話――電話越しではあるけれど、悠の声を聞いたことで、妙な焦燥感は消えていた。
 耳の奥が、くすぐったくなるような、優しい声色がいつまでも残る。


 ――迎えに、来てくれるって……どこか、行くのかな?


 悠からの誘いに、心躍らせる私は、彼の存在をすっかり忘れていた。
 気づいたのは、ジャリ……と、小石が舗道と摩れる音が、聞こえてきたその時――。


「!」
「電話、終わった? 父さん……だね、その顔。ちぃちゃん、本当判りやすい」
「ご、ごめん……電話は終わった。あ、今日は、悠ちゃん遅くなるから、自分でご飯食べてって」


 あまりにも、顔が綻んでいたのか、少しばかり苦笑いする彼。
 しかしながらも、その彼の口元は僅かにつり上がっていた。

 それが何を意味しているのか、理解する事が出来たのは――。


「……そう。ちぃちゃん、今日は家に来ないの?」
「え……あ、うん。今日は……行かない、よ。また、明日……ね」


 悠の帰りが遅く、食事の支度をしなくても良いとなれば、彼の言うように、家へ行く必要はない。
 だから、ありのままを彼に伝え、私はゆっくりと歩き始めた。


「ちぃちゃん」


 と、一つ歩を進めたとき、手首に僅かな痛みが走る。


「や……っ?!」
「暗いから、家まで送る」


 振り返れば、いつもとは少し違う彼の姿があって、手首に感じた痛みは、あの日の夜の事を思い出させた。


 ――この痛みは……あの時と……。
 やっぱり、私には……無理、なのかな……。


 尋常ではない速さで動き出す心臓の鼓動は、同調するかのように、私の体は震え始める。


「……っ!」
「……ちぃちゃん?」
「や……め、て……お願い、だから……っ」


 暗闇の中で起きたあの日の出来事は、ゆっくりと私を過去へ引き戻した――。

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