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禁断遊戯~背徳と罪悪の狭間(はざま)で~
第1章 豹変


 ――や……今の、まさか……?!
 明日……戻る、のに……


 私だって、そこまで鈍くはない――彼が何をしたのか、すぐに判った。

 ただ――翌日には悠が帰ってくる、という事実に焦心に駆られ、涙腺が自然と緩む。
 

「ココ……赤くなった。どうする……? その泣き顔……父さんに見せた事ある?」 


 私の心の動揺を煽るかのように、クスクスと笑い、首筋の赤く染まった場所を指でなぞる彼。

 事あるごとに、自分の父親と比較し、焦燥心を煽り続ける。
 彼の行動や言動に、涙を流す事しか出来ない私は、歪んだ視界のままで、声を上げた。


「ひ、ど……い……っ!」
「これが……オレのやり方。父さんに、バレなきゃいいね……」
「も……や、だ……ぁ……っ」


 何を言っても無駄――まさに今の彼に相応しい言葉。

 私はこの状況から逃れたい一心で、思うように動かない体を捩り、イヤイヤする子供みたいに首を振り続ける。


「ココ、ネックウォーマーで隠せば? 風邪引いて……喉が痛いからって言えば、心配ないよ」


 そんな私を嘲笑うかのように、そう言って耳元で囁く――悠に、嘘を吐け、と。

 背筋が凍るようなそのセリフに、動けなくなってしまった私は、更に言葉を続ける彼を視界に映した。


「………………」 



 ――嘘……悠が一番嫌いな事。
 私が、嘘を吐けないのを……知ってるのに。
 無理な事、言わないでよ……


「だって……父さん、ちぃちゃんの事、大事にしてるから。嫌がる事はしないでしょ? もっとも、ちぃちゃんって……流されやすいから、気をつけないとね?」


 この時、初めて気づいた――彼は“確信犯”だと。
 そして――悠との会話を聞いていて、私がどんな性格なのか、全て把握していた。

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