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恋愛無双ーレンアイムソウー
第1章 12月初旬
「めぐ…化粧すんの早いね」
「うん?5分あれば十分だけど」
「まじで?たった5分でその仕上がり?!」
「結子もそんなもんでしょ~」
恵は味噌汁をお椀に注ぎながら軽く言う。
ーーーいやいや、私の5分と
めぐの5分は全然違うと思うよ…
結子が恵に反論するより先に
重みのある足音がリビングに入って来た。
「めぐりん、ゆいこりんは元々
化粧すらほとんどしないからよぉ」
「あ~そっか。結子、顔がこゆいから
薄化粧でもちゃんとしてる様に見えるんだ」
「私なんか髭の痕跡を隠すだけで
5分以上かかるわよ!二人が羨ましすぎっ!」
「蘭、落ち着いて。私だって産毛という名の
髭がここに生えてるんだから!」
恵が自慢げに自分の口元を指差し、
そこを蘭がまじまじと見つめている。
「あら、本当だわ。薄いけど生えてる。
めぐりん…アナタ、生きてる人形じゃなくて
ちゃんとした人間だったのねぇ」
「蘭みたいに髭こゆくはないけどね。
それに私、蘭より人間らしいと思う~」
ーーーおいおい。朝からバトルなよ。
朝ご飯位ゆっくり食べさせてくれ…
結子が全員分の味噌汁を運びながら
黙って二人を見守っていると
耐えかねた父親が口を挟んだ。
「ちょっとちょっと、キミ達!
朝っぱらから何の話してんの。
女の子の話なのか、男の子の話なのか
分かんなくなってるし…
特にめぐちゃんは髭なんて言わない事!」
恵を気に入っている父親が悲しそうに注意する。
恵はそんな父親を見てニコリと笑う。
「結子パパはその髭、似合わないよ。
今すぐ剃り落とすべきだよ~」
「えっ…」
恵の笑顔でのストレート口撃(こうげき)に
父親は口元を押さえて固まった。
ーーー泣いちゃう泣いちゃう。
娘の友達に泣かされそうになる親とか
まじどんだけよ…
「めぐりん、ゆいこりんパパが可哀想よぅ。
ゆいこりんパパ、私は髭がある方が
ダンディで素敵だと思うわぁ」
「そ、そうか…」
ーーー元・男に言われてもねぇ。
フォローになってないっつーの。
結子のお腹が鳴る。
「どーでも良いけどさ…お腹限界。
準備出来たし、食べよーよ!」
結子がそう言うと皆黙って椅子に座った。
黙ってる分、箸が進んで仕方がなかった。