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今宵、君の全てを
第1章 今宵、君の全てを
何で今日に限ってトラブルが続くの?

一件片付けたと思ったらもう一件一緒に行って欲しいと頼まれて。
全部が片付いたのはすでに夕方。
代わりに明日、休ませて貰える事になったのは良かったけど……
「お詫びに食事でも」
そう言って笑う営業課長に丁寧に断りを告げてタクシーに飛び乗った。

福岡営業所の営業課長は押しが強い。ヘルプに来るに当たり、直々に社長に良くして欲しいと頼まれたのもあって、断り切れない私は振り回されてばかり。
本当は先週でヘルプの延長も終わる約束だったのに、もう一週間延びてしまった。
仕事上がりに何かと誘ってくるのも止めて欲しい。毎回お断りする度に悲しそうな顔をされて、私は悪くないのに心苦しく思ってしまう。
今日だって、来てみたら私じゃなくむしろ担当者が来た方が分かりやすかったんじゃないかと思える案件で……ホント、困る。

せっかく拓真さん朝早くから来てくれてたのに……

怒らせてしまったのか、帰れない事が分かって昼間に掛けた時も、今も、拓真さんと携帯が繋がらない。昼に送ったメールに返信も来ていない。

もしかして帰っちゃった、とか……

黙したままの携帯が涙に滲む。
見慣れたホテルが見えてきて、いそいで涙を手の甲で拭った。
運転手さんの不躾な眼差しに顔を伏せて料金を支払い、車寄せから急いでホテルに入った。
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