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今宵、君の全てを
第1章 今宵、君の全てを
真純が帰ってきたのはドアの閉まる音で気づいていた。
起きて迎えても良かったが、どういう反応をするのかが気になって。そのまま動かずに様子を伺った。

そろそろと近づいてきて
「良かった」
聞こえてきた小さな呟き。
心底ほっとしたような響きにふと時間が気になった。
こそこそと離れて行った気配に枕の下から音をたてないように携帯を取り出す。
そこに表示されたアイコンは真純からのメールとたくさんの着信を知らせてくれていて。

しまった。空港でマナーモードにしたまま忘れてた。
『良かった』の理由はコレか。
しかも今五時過ぎって、どんだけ寝てんの俺。
いくら疲れてて、久しぶりの真純の匂いに安心したとはいえ、寝過ぎだろ……

ため息を吐きそうになって踏みとどまる。
何やらごそごそしていた真純が戻って来る気配。真純の室内着を抱えて目を閉じた。
ベッドの後ろがわずかに沈む。

あ、後ろ詰めとけば良かった……

前にスペースを確保していなかった事を後悔していると、真純が背中にそっと触れて来た。
どうやら背中に寄り添っているらしい。

俺は正面から抱き合いたい。
でも背中から伝わる真純の温もりは心も温めてくれてるようで。つい口元が緩んだ。

可愛い……な

しばらく甘い空気を楽しんで。振り返ろうとして聞こえてきた寝息。

……マジか



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