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今宵、君の全てを
第1章 今宵、君の全てを
柔らかな舌に口の中をなぞられる。時に絡んで吸い上げられて、久し振りの感覚に身体が震える。

ん……
気持ち、い……

軽くキスするだけのつもりが、目覚めた拓真さんからの濃厚な返しに酔わされて、身体の芯はとっくに熱を帯びていた。
飲み切れない唾液が頬を伝う。それでももっと深く口付けて欲しくて縋りつく。
拓真さんが上から圧し掛かってきた。動きを制限されて身体がさらに疼き出す。

あっや……
たくま、さん

もっと……
もっと、して?

角度を変えて深く交わる口付けにうっとりと浸る。まだ続けて欲しいのに、拓真さんに頭を起こされた。
間を結ぶ銀の糸がたわんで切れる。

……っ

閉ざされていた目蓋がゆっくり開いた。朝はバタバタしてたから、やっとしっかり拓真さんと目が合って。
すでに緋を纏った、熱い瞳。絡み付くような目差しにドキッとする。
「お帰り、真純」
ニコリと笑ってまた顔を寄せてくる。頬をつたった唾液を追う様に舐められて
「んんっ」
甘えた声が漏れた。
到達した耳元でふふっと笑う。掛る吐息にゾクゾクして
「お、遅くなってごめんなさい」
謝る声が震えてしまった。
「うん、眠ってた」
もう一度頭を起こしながらそう言って、右だけ上がった口角。色っぽい微笑みに心臓が跳ねる。
「起こしてくれてありがとう」
「ぁ、」

ドキドキして恥ずかしくて、目を合わせていられなくて顔を背けた。
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