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インスタントコーヒー
第11章 そして
あれから6年の時が流れた。
あの噂が流れて以来
先生とは一切喋らなかったし
周りの人にはユイやタクが
根回ししてくれたおかげもあって、
みんなすぐに噂は忘れてしまったようだった。
私は近くの大学の教育学部の
4年生。
新調したスーツを身に纏い
懐かしい母校の高校の門をくぐる。
今日から教育実習。
私は高校教師の道を選んだ。
教師、という職業に憧れもあり
先生が喜んでくれるんじゃないか、
と本当に勝手にそう思っていた。
教育実習でお世話になる先生方との
ちょっとした会議のようなものを済ませ
会議室の外に出ると
中庭を歩いている懐かしい姿を見つけた。
先生だ。
胸が高鳴る。
この6年間
私の心にはずっと先生が残ってた。
階段を駆け下り、先生の元へ走り寄る。
「先生!」
「…アヤ! 教育実習生か?」
「はい」
「随分と大人になったなあ、
卒業して4年経つんだもんな。」
先生は眼を細める。
優しい笑顔は何年経っても変わらない。