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インスタントコーヒー
第1章 トラウマ
今でもハッキリと覚えている。
あの日のこと。
私、藤崎綾子(アヤ)の人生が大きく変わったあの日のこと。
小学5年生の秋のこと。
「あれ、アヤ、今日はこれで授業終わりだよ。もう下校の時間だよ。」
「運動会のための準備があるから6年生以外は下校するんだよ、お前忘れてただろ。」
いつも通り4時間目の授業に向けて教科書を机の上に並べるわたしに、幼馴染で大の仲良しの近藤唯花(ユイ)と平賀拓海(タク)が言った。
「そっか! すっかり忘れてた、どうしよう、お母さんに給食ないって言うの忘れてた…」
「ウチのお母さん、今日ハヤシライス作るって言ってたよ。アヤも食べにおいでよ。」
ユイが誘ってくれた。
ユイとタクは幼稚園からの付き合いで、母親同士も仲良し。家もすぐ近くだ。私たち3人はお互いの家で毎日のように遊んでいた。
いつも通り3人横に並んで下校。
太陽がキラキラ眩しい。
おまけに太陽の熱がアスファルトからものぼってきて、口を開けば『暑い』だ。
「家に荷物置いたらすぐユイの家に行くね。」
分かれ道で2人に手を振り、真っ赤なランドセルをピョンピョン跳ねさせながら家へ急ぐ。