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インスタントコーヒー
第10章 向き合う
先生はこんなときにも
すごく冷静な顔をしている。
先生の向かいの席に座った。
異様な空気が流れる。
周りの落ち着いた雰囲気と
ミスマッチだ。
「わざわざ、遠くまでごめんな。
車もないから、大変だっただろ。」
「いえ、こちらこそわざわざ来ていただいて
ありがとうございます。」
私たちの今までの関係から考えると
違和感しかない、
まるで初めて会ったかのような
堅苦しい会話から始まった。
「何か、注文しようか。俺はコーヒーで。」
「私も」
先生は出てきたコーヒーを
ブラックで飲む。
やっぱり先生にはコーヒーカップが
よく似合う。
先生の家に初めて行った時のことを
思い出して
私も、ブラックで飲む。
おいしい。
嫌な苦さがない。
苦くて苦くて仕方なかった
思い出の味じゃない。
あの頃とは、もう違うということを
予感させるような味だった。