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花咲く夜に
第6章 決心
翌日。


4月も末に近づき、
少し汗ばむ陽気だ。


めぐるは朝、
牛舎での作業を終えると台所へ走り込む。


『あら、めぐるちゃんどしたの』
昭恵が不思議そうに訊ねる。
『貴斗さんにお弁当作ろうと思いまして……』



めぐるは手早く卵焼きを焼いた。
冷凍庫に常備してある茹で野菜の中からほうれん草を取り出し、
ベーコンとコーンを混ぜてバターで炒める。


おにぎりを塩で握り、
海苔を巻いて弁当箱へと納めた。


冷蔵庫から昨日夜に仕込んでおいた鳥ミンチ肉を取り出して、
チーズを挟んで焼く。




『めぐるちゃん甲斐甲斐しいねぇ(笑)』


『貴斗さん、郵便局へ行く日はお昼はコンビニ弁当でしょ?
何となく、このほうが体に良いかなと思って』



めぐるは昨日、
〔貴斗の傷〕を打ち明けられたからこうしているのではなかった。


そういえば、
私って「彼女っぽいこと」してないなぁと思い至ったのである。


貴斗は牛舎で軽く作業したあと、
朝食(こちらは昭恵が作っている)を取り「着替えてくる」と2階の部屋に上がっている。


トントントンと階段を駆け降りてくる足音がした。


『行ってくるねー』と台所を素通りしてスタスタ出ていく。


『貴斗、ちょっと待って!』

めぐるは慌てて追いかけた。

『あ?何だよ』
玄関で早スニーカーを履き開き戸をカラカラと開けていた貴斗は振り返った。


『お弁当、持ってって』


『え?
どしたの急に。まぁいいやサンキュー』
とパッと受け取り行ってしまった。


『………気をつけて〜〜〜』
いってらっしゃいと見送りする間もない。
めぐるは閉まった玄関扉に向かって手を振った。


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