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花咲く夜に
第3章 興味
そして座敷間にて、
拓海と貴斗は向き合って睨み合っていた………


『ウチのめぐるがお世話になりまして』

拓海が目を離さずに頭を下げる。
喧嘩を売っている様にしか見えない………


貴斗は余裕綽々といった体で、
しかし目には凄みを利かせて『いいえー。
こちらこそよく働いてもらってます〜』
と言う。


昭恵が居れば緩衝材になってくれるのかもしれないが、
あいにく今日は昼から地区の寄り合いに行ってしまった。


『あの………
拓海。
この人は、雇い主だから。葛城貴斗さんって仰るの………』
めぐるは剣呑な雰囲気に耐えきれず、
説明した。

『貴斗さん、
こちらは先ほど申し上げました弟の拓海です』


『おいあんた。
めぐるをどうにかしようって魂胆じゃないだろうな?』
拓海は全く聞いていない。貴斗に質問をぶつけた。


『働いてもらってるだけですよ』


『住み込みで?
おかしくない?
いくら雇用とはいえ、
家屋の間借りまでさせるかね?』

『いけませんかね?
住み込みの仕事ではよくあるんですがね』
貴斗も住み込みで雇った経験もないのに、
そう返す。

『め……美藤さんはとても優秀な働き手ですよ。
あなたも心配な気持ちは分かりますが…
お姉さんも未成年って訳じゃない。
どこに住み、どこで働くのかは本人の自由では?』


『うっ………。
そうだけど!
あっ、あんた胡散臭いし!』
『ちょっと拓海…!…』

『胡散臭い。
絶対何かある!
めぐるが美人だからに決まってる』


『何だ、シスコンですか』貴斗は掛けていたメガネを外して目頭を圧した。

違う意味で頭が痛いらしい。

拓海はくるっとめぐるの方を向き、
『何かされてないか?
脅されたとか?』
と必死だ。
めぐるの肩を揺する。


『違うってば!
私は本当にここでお世話になって働いてるの!』

『………本当に?』
疑いの目で拓海はジィィィーッとめぐるの目を見た。
『本当に』
めぐるも目を離さずに答える。


『………分かった。
めぐるがそう言うなら、
そうなんだろうな…』


何か有ったら言うんだぞ、としつこく繰り返して拓海は去って行った………。
父さんと母さんにはちゃんと伝えとくから、
と。
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