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たとえそこに、愛がなくとも
第1章 悪戯な再会

「じゃあ口止め料として、その対価を払ってもらおうか」
彼はそう言うと、私の腰に手を伸ばし、自分の方へと抱き寄せた。そして、耳に触れてしまいそうな位置で唇を動かす。
「お前のその身体で」
そして気づいた時には、彼に唇を塞がれていた。
「……っ!」
目の前に見えた整った綺麗な顔にゆるゆると目を見開く。
久しぶりのキスだった。久しぶりの、類さんとのキス。
「……っ!は、離れてください!!」
私は彼の胸板を慌てて押し返した。胸がドキドキと高鳴って、頰が紅潮していくのがわかる。
こんな男にドキドキしてるなんて、最悪……。
「身体で払え、お前にならできるだろう?」
でもあの時と同じだ。あの時も、いつもこの低く甘い声で、柔らかいこの唇で、私を誘惑したんだ。
口止め料を身体で払うなんて、こんなの脅しと紙一重なのに、ドキドキするなんてバカだ。自分に呆れる。
「どうする?払うか、払わないか」
彼はそう言って二択を与えるけれど、もともと私に選択肢なんてない。バラされた方が困ることなんて、私にも彼にもわかりきったことだ。
もうどうしようもない。私は、彼に身体を与えることでしかこの仕事を続けることができない。
「早く頷けよ。選択肢がないことに、気づいているだろう?」
そう言われ、私は不本意ながらも彼に小さく頷く。悔しい、納得いかない。
「ふっ、当然の答えだな」
彼は、そんな私をバカにするように鼻で笑う。
まだまだ賑わう金曜日の夜の街。
「ななみ」
私は再び彼に唇を奪われた。

