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たとえそこに、愛がなくとも
第2章 ふしだらな身体

正直に言って、彼にひとりの男性として好意を抱いたことはない。ただの仕事仲間で、恋愛対象として考えたことがなかった。
けど、彼はいい人で、今日だって、新たな一面を知ってさらに好意的な気持ちを抱いた。
付き合えないわけじゃない。歳は離れているけど許容範囲。
だけど……
「……ごめん。宮野くんとは付き合えない」
「…………」
真っ先に浮かんだのは、店長の、類さんの顔。
今私は、彼に脅されている状況で、いわばセフレのような関係にある。
そんな相手がいるのに、誰かと真剣に付き合うなんて無理だ。申し訳なさすぎる。
それに相手は宮野くん。彼がいい人だからこそ、余計そんなことはできない。
「……なんで、ダメなんすか?俺の、どこが足りない?」
「ちがうの、宮野くんだからダメとかそういうのじゃなくて……」
「彼氏、いるんすか?」
「……ううん、いない」
「じゃあ……」
「とにかくダメなの!ほんとに、ほんとにごめんね?」
子犬のような目で見つめてくる彼。どんどん心が痛くなる。でも、宮野くんのことをよく思っているからこそ裏切るようなことをしたくないの。本当に、ごめんね……。
「……わかりました」
「うん……」
「けど……俺、諦めないんで」
「え……」
「俺まだ、あんたのことが好きだから」
「いや、でも」
彼は私の言葉を無視し、ギターを持って立ち上がる。
「じゃあ」
「え、ちょ、ちょっと!!」
そして背を向け、私の言葉を一切聞かずに去っていた。
うそ……言い逃げ?ほったらかし?!
うそだぁ……。
私は両手で頭を抱えて困り果てる。
好きでいてくれるのは嬉しい。でも、その好意には応えられない。
あまりに申し訳なくて、ただただ心が痛くなった。

