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たとえそこに、愛がなくとも
第4章 両サイドからの誘惑


その日から時々、私は樹くんと一緒にトラックの中でごはんを食べるようになった。

彼と私に与えられた時間はほんの30分から1時間ほど。

それでも、彼と一緒にいる時は楽しかったし、何より心が休まった。

類さんが好きなことに変わりはない。けれど、彼のそばにいるのは心臓に悪い。樹くんの隣の方が圧倒的に落ち着ける。


「桃さん、口開けて」

「口?あー」

彼に言われた通り口を開けると、口の中になぜかブロッコリーが放り込まれる。

「え、なに?」

「俺、ブロッコリー苦手なんで」

「子供か」

そうツッコミながらも、モグモグと口を動かしてふふっと笑ってしまう。

たまに見せる、18歳らしい無邪気な顔。

そして

「桃さん、俺のこと、そろそろ好きになってくれました?」

耳元で囁かれる甘い声は、年相応ではなく色っぽい。

彼は確実に私をどんどん夢中にさせていた。



ある日、お昼ごはんの後に一緒に事務所に戻ってくると

「あ、樹くんやっと戻ってきた」

本田さんが、彼のことを待ち構えていた。そして隣にいる私を空気のように扱う。まだ怒っているらしい。

でも確かに今は、店長と関係を持ちながら、樹くんに傾きかけている自分がいる。

なにも悪くないとは、言い切れない。


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