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第1章 別れと始まり

「佐々木、あのな…？」

「ビール。…もう一杯いいですか？」

滝本さんが何か言いかけるのを待たずに、空のグラスを差し出して聞いた。
滝本さんは苦笑いで店員さんを呼び、ビールを注文してくれた。

「滝本さんの言う通りかもしれません。」

「えっ？」

「過去を振り返ると、毎回毎回、都合よく呼び出されるようなデートしかしてなかったかも…しれません。」

片肘をついて、顎に手をやり、うーんと考え込む。
新しいビールが運ばれてきて、私の両手にグラスが収まる。

「今回に限らず、今までずっと。ふふっ、私って二番目の女に好都合な物件なんですかね！？」

明るく笑いながらそう言って、滝本さんを見た。
一緒に笑ってくれると思っていたのに、目の前の滝本さんは思いっきり傷付いたような顔をしていた。

「佐々木、お前な…？」

「やだ、なんて顔してるんですか。笑ってくださいよ。」

「やっぱり、お前は無理してるよ。悲しかったり、辛かったり、悔しかったりしたことがあった時は泣いたっていいんだぞ？」

滝本さんが傷付いたような顔のまま、子どもを説得させるような優しい口調で話し出した。

「そりゃ、仕事中は困るけど。プライベートだろ？」

傷付いた顔から少し優しく微笑んだ顔になった。

「我慢するな。そこは笑うところじゃないだろ？」

……っ！滝本さん…？