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第1章 別れと始まり

「……泣かせたいんですか？」

「うん。お前があんまりにも強がって笑ってるから。その顔されると俺は辛い。」

「……絶対、引きますもん。」

「引かねーよ。」

「絶対、めんどさいって思いますもん。」

「思わねーよ。」

ヤバいヤバいヤバい。
目の前の滝本さんが滲んで見えてきた。

「絶対、ブサイク…ですもん。」

「じゃあ、目、瞑っててやろうか？」

「ひどっ、…ふっ…」

下唇を噛んで我慢していたけれど、ついに決壊ギリギリまで涙が溜まってきて、鼻がつんと痛くなった。

「やだっ！」

涙がこぼれ落ちる直前でガバッと机に突っ伏して、顔を隠して悔し紛れに叫んだ。

「ははは、…やだって、お前。」

「うぅ…ひくっ…っく。」

あぁ、ホントに泣いてしまった。
絶対絶対泣きたくなんかなかったのに…

「たっ、滝本さっ…の、っんく…せいっ…っく、です…かっらねっ！」

「うん。俺のせいだな。…よしよし。」

えっ、頭を撫でられている？

「強がって笑ってるより、ずっといいよ。」

「ひぃっ…くっ…さ、最っ悪です。こんな素敵なバルで…うぅっ、周りにドン引きされて…うぅ…」

ホントに最悪だ。
毎日顔を会わす会社の先輩の前で泣くなんて…

「最低最悪です。……もう、ここに来れない…」

「誰も見てねーって、大丈夫。」

わんわん泣くというよりは嗚咽が漏れる程度だったが、机に突っ伏している女から嗚咽が聞こえてきたら、普通にドン引きだろう。