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夜は、毎晩やってくる。
第8章 届けて欲しいの 前編

「……こちらにサインか印鑑を」

どう対応していいかわからずに固まり――そして、あらぬ妄想に走って遠いどこかへ行ってしまったあたしの心は、そっと指先に触れた王子様の手によって引き戻された。

気づけば王子様は玄関口に片膝をついて、あたしに向かってうやうやしく何かを捧げるように差し出していた。小包だ。

そして、サインか印鑑をご所望の様子。

ああ、ハンコ、ハンコ、どこにあったっけ?

こないだ近くにできた銀行に、毒ウサみんのキャラ通帳があるってんでつい口座開設しちゃって、確かそのときにどっかにしまい込んじゃった気が。どこだったけなあ……。

あ、でもサインでいいのか……って。

王子様ちゃうやん!
宅配便やないかーーーーーーい!

「えっ……えっ……宅配ですか?」
「はい。ご用命を賜り、貴女の元へ馳せ参じました」

……どーよ、これ。
なんか徹底してるなあ。

あれか、執事喫茶で「お帰りなさいませ、お嬢様」とか言うのと同じ類の演出か。コスプレサービスもついにここまで来たか日本。

カルタゴはローマの将軍スキピオ・アフリカヌスに敗れて滅んだ。ポンペイは火山の噴火で灰に埋まった。ソドムとゴモラの人々は神の怒りで塩の柱と化した。

この国はどうやって滅びることになるのだろう。
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