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夜は、毎晩やってくる。
第8章 届けて欲しいの 前編
ま、いーか。
そんなことは国会で偉い人たちが決めればいい。
事態が呑み込めてようやく心に余裕の生まれた私は、改めて目の前の王子様を眺める。
歳の頃は私より少し年下か同じぐらいか。
少し長い髪を束ねて垂らし、顔は堀が深くて外人みたい。ハーフかも。最近のハーフはバタくささが薄くて見分けがつけにくい。
まあ、なんというか、うっとりしちゃうようなイケメンだ。
声も素敵。低音が響いて、耳にしただけでちょっとお腹のあたりがきゅんってしちゃう感じの。
お仕事じゃなかったら、ちょっと上がってお茶でもなんて、柄にもないこと言ってしまいそうだわ。
確か、国際女子マラソンなんかでも、入賞者に商品を渡すプレゼンテーターをイケメンにしたら大受けで、次回の参加者も増えたとかニュースで見たことある。
女性をターゲットにしたイケメンビジネスってことね。
はー、眼福眼福。ぶんぶく茶釜。
ハンサムはいいものだ。とりあえず、ご馳走様でした。
それで……と、あたしは何をする所だったかを思い出す。そうだ、サイン。
「あの、ペン……あります?」
そう尋ねると、王子様は優雅な仕草で手品のようにその手の中に羽ペンを出現させた。
そ、そうだよね。
胸ポケットからボールペンとかじゃないよね、王子様だからね。