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夜は、毎晩やってくる。
第8章 届けて欲しいの 前編
「うん、びっくりしたし、ずいぶんニョボジも食べてなかったから嬉しかったよ」
「ほうか、ほりゃあ俺も嬉しいわ。ほんで、都……おめ、クリスマスは返って来るだか? 俺たち、そろそろ……」
「仕事があるから……まだ、どうなるかわかんない。また連絡するね」
お礼だけ言って、そそくさと電話を切る。
照男は幼馴染で小中とずっといっしょだった。
中学卒業後は、照男は家業を継いで漁師になったので、それ以来ずっと会っていなかったけれど、就職活動が終ってひと段落ついた頃、中学の同窓会で再会した。
で、成り行きで付き合おっかということになってしまったのだけれど、彼はほとんど漁に出たままだし、あたしは東京でOL。相手は遥かインド洋。遠距離にもほどがある恋愛だった。
実際、この関係はもう二年になるけれど、ほとんど恋人らしいことをしたことがない。
よく自然消滅しないでいるなと自分でも思う。
これは本当の恋なのかな、とも。
照男は寂しくなったりしないのかな?
電話の声はいつも馬鹿明るい陽気さに満ちている。
よく日焼けした真っ黒な笑顔。太くて逞しい腕。海の男。
悪い男ではない。でも。
小包から出したニョボジを切り身にしてタッパーに詰め変え、冷蔵庫にしまいながらあたしはそんなことをぼんやりと考えていた。
だからだろうか、気づいたらベッドに寝転んで、運送会社を検索していた。
あのサービスがどんなものなのか、知りたいと思ったのだ。