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夜は、毎晩やってくる。
第9章 届けて欲しいの 後編

泣きながら、届くはずのない叫びを上げて、のしかかる王子の身体を引きはがそうとしたそのときだった。

「おんめら、おらがん都に何ぞごねすっとじゃか! いねい!」

玄関のドアがバン! と大きな音を立てて開き、真っ黒に日焼けした大柄な筋肉の塊が部屋に飛び込んできた。

王子様と爺やが素早く立ち上がり、はずみであたしの体がソファに投げ出される。

腰に挿していたレイピアをスラリと抜いて、油断なく構える王子。
徒手のまま王子の後ろに控えるように爺や。

突然の闖入者である真っ黒な男――照男との間に距離を置き、円を描いて足を運びながら、ジリジリと互いの隙を探る。

……なにこれ?

なんだこの小芝居わ。

「エイ!」
「やあ!」
「クキェーッ!」

わざとらしい雄叫びを上げて、休みの日の昼間にTVをつけるとやっている時代劇のような殺陣よろしく三人が交錯する。

「ぐっ……お見事……」

照男のチョップを背中に受けて、王子が一瞬固まり、そしてどっと床に倒れる。……くるんっとその場で一回転してから。
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