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夜は、毎晩やってくる。
第9章 届けて欲しいの 後編
※ ※ ※
余韻の微睡から覚めると、王子様はいなくなっていた。
照男もいない。
「夢……?」
欲求不満だったのかしら? だから、あんな夢を?
と、思いきやソファの上で全裸だ。身体にかけられていたタオルケットをはだけて起き上がると、ダイニングの紐のれんを掻き分けて照男がのそりと姿を表した。
「今晩は泊まっていくけぇ……、あげえ派手な声出してイッたち、腹空いちょるじゃろ、ニョボジの煮つけ、作ってやったで、食え」
そう言って、冷蔵庫に残っていたニョボジの切り身で作ったのだろう、煮つけを持った小皿を突き出す。
箸はない。
手づかみで食べるのが地元の漁師の流儀だ。
「それっと、こんげは俺ぁが、持って来ただ。はあ、やっぱりニョボジにゃ釜大蛇よの!」
もう片手にぶらさげているのは地酒の一升瓶。
ああ、田舎臭い。潮臭い。
でも。
「……大好き」
やっぱり、照男はあたしの王子様。
照男が摘まんで寄越したニョボジにパクリと食いつく。
懐かしい味噌の味。故郷の味。
どうやら、ドレスは披露宴で着ることになりそうだ。
《届けて欲しいの 後篇 了》