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ケン兄とボク。
第1章 ケン兄とボク。
「え、ちょっとケン兄」
「俺さ」

 耳元でボソッと聞こえた声に、ゾクッと体が震えた。え、なにこれ。

「俺さ、ゆうたが好きなんだ」
「!!!」

 心臓が跳ねた。

「だからこうして抱き締めたし、キスもした。無理矢理だったけど」

 ケン兄、ボクが好きなの?
 男同士なのに?

「ケン兄……ボク達男同士だよ?」

 そう疑問を投げ掛けると、ケン兄は頷く。

「そうだな。でも、俺はお前が好きだし、男同士とか関係無いと思ってる。だって、ルイ姉だって男同士のエロ本見てるし、俺、お前と以外こういう事したくないし」
「えっと……そう、なんだ」

 多少混乱しつつも、ケン兄が真剣にそう言ってるのは分かった。……何故か凄くドキドキするんだけど、なんで?

「実験してみて、ちゃんと確認した。俺、ゆうたとエロい事したい」
「ええ?」

 ケン兄がボクの顔を見て喋っていたら、ボクが凄く困った顔をしていたのが見えただろう。抱き締められたままだったので、それはかなわなかったけれど。

 それにしても、……エロい事って、あのエロ本みたいな事をボクとケン兄がするって事?

「そ、それはちょ──」
「頼む。少しだけだから」

 ちょっと遠慮したいなぁと言う前に遮られた。

「で、でもさケン兄」
「凄く気持ち良いと思うぜ? ゆうたも、俺も」

 気持ちいいって……でも、うーん。ルイ姉もケン兄もそう言ってるみたいだけどさ、本当にボクとケン兄がエロい事して大丈夫なのかな。だって、絶対母さん達に怒られるよね?

「大丈夫。部屋の鍵は掛けたし、声だけ気を付ければ。それに、皆もう眠ってる。……ルイ姉は分かんないけど」

 考えが知らず知らずに口に出てたみたい。だいぶボク混乱してるみたいだね。
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