この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
スーパーヒーロー
第2章 アンリ
そんな気持ちが僕の胸の中にはあった。
僕は彼に手を引かれ、自分の帰り道とは逆方向へ進んでいった。
やっぱり自分の奥底に潜む欲望には勝てないみたいだ。
その「欲望」がなんなのかは、よく分からないが。
彼は黙ったまま歩き続ける。
僕は彼に聞きたいことがあった。
「・・・アンリ君っ、あの・・・」
「ん?なんだ?」
「その、さっき、言ってた・・・と、とっ、とも・・・だち、っていう・・・」
「ともだち?」
「そうっ、それ・・・僕と、ともだちになってくれるの?」
恥ずかしくて彼の顔を見ることができない。
言葉もすらすら思うようにでてこないし。
僕、どうしちゃったんだろう。
「お前って面白いやつだな」
「・・・?」
「いいや・・・うん、もちろんだよ。ともだちだ」
僕はその一言に、今日起こった数々の不幸なんか吹っ飛ぶくらいの
喜びを感じた。いろんな意味で涙が零れ落ちてくる。
「お、おい、泣くなよー」
「っ・・・う、うん」
「ほら、もう着いたから」
気づけば僕の全く知らないところにたどり着いていた。
嬉しい反面、来てしまった・・・というよくわからない気持ちでいっぱいになる。
もう外は暗くて、住宅街の電灯や家々の電気がぽつぽつと光っている。
彼は家に近づくと入り口の柵を開け敷地内へ入っていった。
僕は彼の家の前で立ち尽くしているまま。
「おい、どうした?入らないのか」
「っ・・・お。親御さんに悪いんじゃないかな、こんな時間に」
「いいや、俺今は一人暮らしみたいなもんだから。親はしばらく出かけてていないんだ。だから、いくら騒ごうと問題はないぜ」
彼はそう言って僕に手招きする。
転校したばかりだというのに、家に帰っても一人なのか。
僕は、同情とは違うが、彼が一人でいることに、無性に寂しさを感じた。
少しでも僕がそばにいてあげられたら、と・・・そんなことまで思ってしまった。
「僕・・・あの」
「大丈夫だ、怖がらなくてもいいんだ」
怖がる?
彼の優しい声が耳に入ってくる。
この優しい声は、なんて表せばいいんだろう。
自分の耳だけに響くような、僕の体に不思議な刺激を与える彼の声。
もっと聞きたい。