この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
スーパーヒーロー
第1章 僕はオタク
そこにいたのは・・・
僕のグリーンベースだった!!!
間違いない、僕の目に映っているのは僕のヒーロー。
女の子たちから「アンリ」と呼ばれているその男の子は、僕と同い年ぐらいで僕が想像していた正義のヒーローグリーンベースとほぼ同じ顔つきをしている。
髪の色、肌の色、目の形、鼻の形、体格、背の高さ。全部。
着ている服もどことなく雰囲気が似ている。
これは、なにかのサプライズ?!
神様はこの何の変哲もないオタクにここまでのサプライズプレゼントを用意してくれるなんて!今日はなんて良い日なんだ!!!!
やばい、目の前にグリーンベースがいる。
さっき見た夢よりも鮮明にリアルだ。
・・・なぜか心臓がドキドキしている。
・・・これはなんだ?
彼はぐいぐいと近づいてくる女の子たちに目もくれず、
悲鳴とともに食堂から出て行った。
ほんの一瞬だったが、僕は夢を見たような気がしてならなかった。
だってしんじられないだろう。似すぎだよ。
これで普通に名前がグリーンベースだったら、何かの運命だったかもしれない。
そう、僕は心の中で笑った。
心臓はまだドキドキしている。
妙な気持が込み上げてくる。体に起こっている現象、心の異状は、
僕にとってはほとんど初めての事ばかりで、頭が追いつけない。
自分が今現実世界にいるということを認識することで精一杯だ。
驚きばかりで思考が停止してしまったようだ。
女の子たちの悲鳴で壊れそうになっていた耳は、
今は自分の心臓の鼓動の音を捉えるばかり。
僕どうしちゃったんだろう・・・。
「お、無事だったかー」
ヘンリーが話しかけてくる。
さっきまではこいつを恨みそうになっていたけど、今は話が別だ。
むしろヘンリーに感謝をしたいくらい。
「なんか、ボーっとしてるな?本当に大丈夫か?」
「うん」
「・・・おいおいまさか、本当にあのイケメンに恋しちゃったーとか言わないよな」
まさか、僕は男だ。
いくら女々しいと言われたって僕は男だ。それは変えられない。
僕は男なんだ。何度も念を押す。何度も自分の胸の内に話しかける。
それでも・・・
やっぱり僕はどこかが変だ。
「・・・おーい、大丈夫かー???お前、まさかやっぱり」
「そんなわけないだろ」
僕は今できる精一杯の笑顔で言葉を返した。