この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
はじめの一歩
第1章 Butterfly
それからしばらくして、僕は由美子を実家に連れて行った。
「こちら、一之瀬由美子さんです。」
実家の座敷で、座卓を挟み両親と向かい合う僕と由美子。
「一之瀬 由美子と申します」
由美子は深々と頭を下げた。
「一之瀬…」
父は名前を聞いてピンと来たのか、由美子の顔をじっと見たが、何も言わなかった。
母は値踏みするような目で由美子を舐めるように見ている。
母が望むのは僕の妻ではなく、武井の嫁だ。
両親の代にはそれが当然だったのだろうが、今は違う。と僕は思う。
しかし母の中ではその価値観は未来永劫不変のものであるようだ。
「由美子さん、ご家族は…」
「母と、弟が一人おります。父は亡くなりました。」
「ご職業は…?どこかの会社にお勤めですの?」
「もう辞めましたが…この間まで北新地のクラブに勤めていました。誠さんとはそこで知り合いました。」
…やはり、そこは濁さないんだな。彼女の性格からしてそうだろうとは思ったが。
水商売に従事していたことを恥とは思っていない。
寧ろ、その収入で家族の生活を支えたことを誇りに思っているし、そこは僕も偉いと思うから、別段隠すところでもないと思っている。
「こちら、一之瀬由美子さんです。」
実家の座敷で、座卓を挟み両親と向かい合う僕と由美子。
「一之瀬 由美子と申します」
由美子は深々と頭を下げた。
「一之瀬…」
父は名前を聞いてピンと来たのか、由美子の顔をじっと見たが、何も言わなかった。
母は値踏みするような目で由美子を舐めるように見ている。
母が望むのは僕の妻ではなく、武井の嫁だ。
両親の代にはそれが当然だったのだろうが、今は違う。と僕は思う。
しかし母の中ではその価値観は未来永劫不変のものであるようだ。
「由美子さん、ご家族は…」
「母と、弟が一人おります。父は亡くなりました。」
「ご職業は…?どこかの会社にお勤めですの?」
「もう辞めましたが…この間まで北新地のクラブに勤めていました。誠さんとはそこで知り合いました。」
…やはり、そこは濁さないんだな。彼女の性格からしてそうだろうとは思ったが。
水商売に従事していたことを恥とは思っていない。
寧ろ、その収入で家族の生活を支えたことを誇りに思っているし、そこは僕も偉いと思うから、別段隠すところでもないと思っている。