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はじめの一歩
第1章 Butterfly
それからしばらくして、僕は由美子を実家に連れて行った。

「こちら、一之瀬由美子さんです。」

実家の座敷で、座卓を挟み両親と向かい合う僕と由美子。

「一之瀬 由美子と申します」

由美子は深々と頭を下げた。

「一之瀬…」

父は名前を聞いてピンと来たのか、由美子の顔をじっと見たが、何も言わなかった。

母は値踏みするような目で由美子を舐めるように見ている。

母が望むのは僕の妻ではなく、武井の嫁だ。

両親の代にはそれが当然だったのだろうが、今は違う。と僕は思う。
しかし母の中ではその価値観は未来永劫不変のものであるようだ。

「由美子さん、ご家族は…」

「母と、弟が一人おります。父は亡くなりました。」

「ご職業は…?どこかの会社にお勤めですの?」

「もう辞めましたが…この間まで北新地のクラブに勤めていました。誠さんとはそこで知り合いました。」

…やはり、そこは濁さないんだな。彼女の性格からしてそうだろうとは思ったが。
水商売に従事していたことを恥とは思っていない。
寧ろ、その収入で家族の生活を支えたことを誇りに思っているし、そこは僕も偉いと思うから、別段隠すところでもないと思っている。
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