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はじめの一歩
第1章 Butterfly
だが母は…案の定そんな女を家に入れるわけにはいかないと顔を真っ赤にして怒り出した。

これも予想はしていたことだったが…

当の由美子はそんな母を前に平然と座し、

「お母様は、私が、この武井家の嫁には相応しくないと仰りたいのですよね?
でしたら、誠さんの奥様には然るべきお家から相応しいお嬢様をお迎えになればよろしいんじゃないですか?
誠さんは、私と私の家族の面倒を見ると約束して下さいました。その約束さえお守りいただければ、私は日陰の身でも一向に構いません。」

僕は、噴き出しそうになるのを必死で堪えたが、頬が緩んで痙攣するのはどうしても抑えきれなかった。

この勝負、由美子の方が一枚も二枚も上だ。

男の両親を目の前に、堂々と愛人宣言する女の子なんてそうはいない。
肝の座り方が半端じゃない。
さすが、高卒で家族を養っていく決断を下しただけのことはある。

女の子にそこまで言わせて僕が黙っているわけにもいかないだろうな…

「母さん、僕の結婚する相手は僕が決める。由美子のことが気に入らないなら親子の縁を切って貰っていいよ、僕が家を出るから。
会社も家も継げなくなるけど、そんなのは養子を迎えるなり、社員の中から次期社長を選ぶなりどうとでもできることだろう。」
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