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他人の妻、親友の夫
第9章 浮気の境界線
まず志歩は不規則で偏った彼の食生活を正した。
散らかった部屋を片付け、風邪でダウンしたときは仕事を休んでまで介護してくれた。
立ち入らせない自分のテリトリーまで入ってくる志歩が、はじめは鬱陶しかった。

しかし彼女はある程度のところで留まってくれる。
押し掛け女房を気取る女は何人かいた。余計なことまでして海晴を苛立たせ、結局別れる。
志歩が違うのは余計なとこまでは立ち入らないでいてくれることだった。
恩着せがましくもなく、説教じみてもいない。
ただ愉しい時間を過ごしたいという海晴の望みを叶え、自然な感じで荒れた暮らしを変えていってくれた。

海晴は次第に心から志歩を愛するようになる。
それまでの恋愛とは異質の、次元が違う深い愛を彼女に覚えていった。

「結婚……しよう……」

付き合いだして一年半。海晴は唐突にそう切り出した。
とはいえ断られるとは思っていなかった。
志歩の愛の強さも感じていたし、向こうもそう願っているに違いない。
即答で受け入れられる。
そう自惚れた確信を持っていた。

「えっ……それはっ……無理。ごめんなさい……」

当たっていたのは即答で返されたことだけだった。

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