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他人の妻、親友の夫
第9章 浮気の境界線
「海晴、前さ……結婚したら子供は三人くらい欲しいって言ってたでしょ……」
「えっ……ああ……言ったかも」

それはプロポーズとかではなく、軽い話題に過ぎなかった。

「私ね……子供が、出来づらいみたいなの……」

志歩は苦しそうに呟いた。
いつも気丈な志歩の、そんな顔を視るのははじめてだった。

「なぁんだ……脅かすなよ」

今度は、自分の番だ。いつも励ましてくれる彼女を励ましてやれるチャンスが巡ってきた。そんな風にさえ思えてしまった。

「子供なんて授かるときは授かるだろ? 子供が出来るか出来ないかなんかで嫁選ぶかよ!! 昭和の名家じゃねぇんだぞ、俺」

志歩は泣きながら笑った。器用な奴だと思ったが、海晴も泣きながら笑っていた。

「結婚してくれ……志歩じゃなきゃ……駄目なんだ……」

小さな彼女を抱き締めると、胸元で頷く動きを感じた。
人生で一番幸せなとき。その時の海晴は本気でそう感じていた。

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