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他人の妻、親友の夫
第9章 浮気の境界線
逃げようにも隣に座る海晴は近すぎた。
肩を抱き締めた海晴は無理矢理理依の唇を奪う。

「んーっ!! んんっ!!」

キスは、はじめてだった。あそこまで激しいことをしておきながら、それだけはお互いに歯止めをかけていた。
圧したり叩いたりと抵抗するが、海晴にとってはじゃれつかれてるのと大差はない。
柔らかな頬を両手で挟み、開かない唇を舐め回した。
下手に動いてしまってはカメラの視野から消えてしまうので、その点だけは注意を払う。

これは秋彦への復讐、いや八つ当たりだった。
たとえ子宝は与えてやれなくても、志歩を肉体的に満足させているつもりだった。
それだけが海晴の支えだった。

しかし志歩は秋彦に責められ、自分には見せたことない顔を晒した。
貪欲なまでに快楽を貪り、精神が冒される寸前の顔。
あのとき、海晴の最後の男としてのプライドは引き裂かれた。

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