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はつこい
第1章 読み切り短編


じゅんくんは、セックスのさなかに名前を呼ばれた瞬間、明らかに怯(ひる)んだ。
何かにおびえるみたいに。
たくましい彼のものが、一瞬、我を忘れるのを感じた。

そして、あたしに気づかれたことが、じゅんくんにもわかった。

じゅんくんは、あたしと同じだった。
セックスではあんなに大胆になれるのに、あたしたちはどちらも、こんなにも怖がりだ。
子どものように、怖がりだった。

こころを開いて、本当の気持ちを伝えることに。
名前を持った、現実の自分を明け渡すことが、怖くて仕方がなかったんだ。

だって、下着を脱いで、性器を出すほうが、ほんとうの自分を見せるよりも
簡単だったのだから。

でも、いま判った。
あたしたちに何より必要なのは、それだった。
いま、失ってはいけないのは、それだった。

だからあたしは怯(ひる)まなかった。
じゅんくんのことが必要だった。
彼を離すことなんて、できやしなかった。

不安さと苦しさが締めるその時のあたしの日常から救って、守ってくれるのはじゅんくんだけだった。

両手で彼の背中を抱いて、何度も名前を呼んだ。
そしてじゅんくんは、あたしの頭をかき抱いて、


りこ


と。

ため息つくみたいに、
りこ、
と、いつものように、理恵子というあたしの名前を略して呼んでくれた。

腰を振って、じゅんくん自身を何度も奥まで突き刺しながら。切ない声で。
りこ、って。


名前って不思議だ。その瞬間、えっちな獣だったあたし達は、恋人になってしまった。
まるで魔法をかけられたみたいに。

あたしたちは、互いの名前を呼び合ったまま、真っ白な快感の嵐の中で迷子になった子どものように、互いの身体にしがみついたまま逝った。

いままでの快楽とは全然違う気持ち良さに、あたしたちは逝ったまま、つながったまま、身動きが取れなくなった。

じゅんくんとあたしの愛液が互いの性器にわだかまり、ふたりの肌は汗でしっとりと濡れていた。

そしてなにより、あたしの目からは、知らぬ間にほろほろと涙がこぼれていた。


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